西地区も前半戦終了。狙い通りの上位に手応え
レギュラーシーズンは東西カンファレンス制で戦っている第22回Wリーグ。東地区に遅れること2週間、西地区も前半戦が終了した。10試合を終えて首位に立ったのはトヨタ自動車アンテロープス。女子スペイン代表を率いている名将、ルーカス・モンデーロヘッドコーチ体制が2シーズン目を迎え、チームフィロソフィーが浸透した分、選手たちは伸び伸びとプレーしている。
三好南穂キャプテンは、「ルーカスHCが2年目で、選手たちがHCのやりたいバスケットがわかってきました。一人ひとりが自信を持ち、1つ1つのプレーにフィットしてきているのが今シーズンの強さ」だという。
ルーカスHCも同様に、「それぞれがやりたいオフェンス、ディフェンスをできたからこそトップが獲れていると思います。選手のやる気やプレーはプロらしく、とても素晴らしいものですが、もっと成長できるところがあります」と手応えは十分。首位をキープしたまま、後半戦を見据えた準備に抜かりはない。
トヨタ自動車を勝点差「1」で追うのがデンソーアイリスだ。女子セルビア代表の指揮官でもある、マリーナ・マルコヴィッチヘッドコーチを招聘し、女子日本代表の本川紗奈生を獲得するなど、リーグ制覇に向けて万全の態勢を整えた。コロナ禍によりマルコヴィッチHCの合流が大幅に遅れ、チーム作りは厳しい状況に陥ったものの、髙田真希や赤穂さくら、ひまわり姉妹、キャプテンの稲井桃子ら充実のロスターで苦境を乗り切った。
「私自身、合流して数週間しか経っていませんが、自分たちがやろうとしているバスケットの片りんは見せられたと思います。後半戦に向けての改善点はすべてです」と、優勝に向けたさらなる成長を強く意識しているマルコヴィッチHC。
「ディフェンスの強度という点で手応えはありますが、チーム内での共通認識、理解という点ではまだ足りないかもしれません。スティールからのブレイクと、点を取れる選手がそろっているのでオープンをしっかり作ることが大事だと思います」とキャプテンの稲井が言うとおり、選手たちもHCの意図を汲んで、さらにギアを上げていく。
上位をにらんで巻き返しを図る2チーム
3位に付けた三菱電機コアラーズは、開幕当初の1勝3敗から挽回に成功して6連勝、勝ち点17で前半戦を終えた。王新朝喜の引退を受け、新たなメンバー構成となり試行錯誤が続いたとふり返る古賀京子ヘッドコーチだが、上位のトヨタ自動車、デンソーとの戦いの中で、「自分たちの流れのどう持って行けば良いのか、自分たちの強みは何なのかというのがわかり始めました」と、確かなキッカケをつかんだ。渡邉亜弥キャプテンに続く、「副キャプテンの根本葉瑠乃、川井麻衣、西岡里紗の3人が精神的面で成長したのが収穫」(古賀HC)だという。
チームを支える渡邉も「なにを学んだかは自分たちも分かっています。そこを突き詰めたことが、6連勝という結果に現れたと思います。反省点や伸ばすべきところをしっかり見極めて練習に取り組みたいです」と、後半戦での上位との対戦を心待ちにしている。
一方のトヨタ紡織サンシャインラビッツは、メンタルの部分でまだしっくりこないようだ。4勝6敗の出遅れは、「いつからリーグが始まるのか、ピンポイントできちっと照準を合わせきれませんでした。どのチームも同じだと思いますが、(コロナ禍の影響で)選手も私も、少しピントが外れてしまった感じ……」と、中川文一ヘッドコーチは反省を口にした。後半戦に向けては、「トヨタ紡織らしい流れのオフェンスができていません。ディフェンスと速攻で走るというプレーが特長なので、そこは継続しつつ、オフェンスでの点の取り方、流れというのを修正してきたいです」(中川HC)と巻き返しを誓う。
加藤臨キャプテンも、「第4週、第5週の試合は手応えを感じているので、後半戦と皇后杯に向けては、もう一度自分たちのバスケットができるように練習したいと思います」と、〝自分たちのバスケット〟に自信を見せた。
若手の成長が期待できる下位チーム
1勝1敗の痛み分け、山梨クィーンビーズとアイシン・エィ・ダブリュウィングスは直接対決で星を分け合った。上位との対戦は厳しい内容が続く両チームにとって、光明となるのが若手の成長だ。
現在5位の山梨QBはルーキーの富田愛理、2年目の若原愛美が全試合でスターターを務め、若原は一試合平均で11得点という数字を残している。チームを支えるキャプテンの水野菜穂や岡萌乃、内堀紫菜らは学生時代に実績を残した選手たちでもある。Wリーグのキャリアとしてはまだ3~5年目と伸びしろは大きい。一昨シーズンの途中から指揮を執る伊與田好彦ヘッドコーチの厳しい指導が実を結び、自分たちが目指すバスケットが浸透しつつある。
「小さいチームなので、ディフェンシブにいかなければならないのに中途半端なところもありました。ディフェンスからブレイクを出すことができなかったので、そこは選手たちと話をして、もう一度つくり直そうと思っています」(伊與田HC)
「どこが相手でも、自分たちがやるべきバスケット、ディフェンスをしっかり頑張って速い展開に持ち込むバスケットはぶらさず、自分たちらしく40分間継続できるように練習してきたいと思います」(水野)と課題が明確な分、選手もチームも成長が期待できる。
アイシンAWは、昨シーズンまで新潟アルビレックスBBラビッツを率いていた小川忠晴ヘッドコーチが今シーズンより指揮を執る。選手、コーチとして〝プロ〟のキャリアを積んだ小川HCは、「格上との対戦では、12、3点差前後で付いていっても1つのプレーで流れを持って行かれてしまう。ターンオーバーが悪いタイミングで出てしまうので、そこは改善しなければいけません。ビッグマンは頑張っているので、そこは上手く継続し、ケミストリーを上げていけるよう、バックアップメンバーの底上げを図りたい」と前半戦をふり返った。
近平奈緒子キャプテンは、「ボールへの執着心が必要、そこは技術ではないと思うので、もっと戦えるように、(優しい選手が多いので)強気で行けるようにしなれば。練習からやり合えるようにしたいと思います」と、後半戦でのチーム浮上のきっかけに気持ちの強さを強調する。今後のチームの変身ぶり、進化した姿を見せてくれそうだ。
来年1月から再スタートするレギュラーシーズン後半戦を前に、今シーズンの初タイトルとなる『皇后杯』が開催される。プレーオフに向けた後半戦は、一戦一戦が順位争いに影響するので各チームとも強化・再整備に余念がない。より熾烈な戦いが予想される後半戦が楽しみだ。
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文=羽上田昌彦(Wリーグ公式ライター)